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三行書評 第61回

2002.8.12

 五つ星が満点。

重松清
『流星ワゴン』
(講談社ISBN4-06-211110-1)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 「死んでしまいたい」と思った夜、《最終電車が出たあとの駅前にたたずんでみるといい。暗がりのなかに、赤ワインのような色をした古い型のオデッセイが停まっているのを見つけたら、しばらく待ってほしい。》そこから、人生の転機を追体験できるドライブを始められるから。
コメント 重松さんの作品は不見点みずてんで読むことにしている。僕にとって重松さんの作品は、同時代ならぬ“同世代”小説という位置づけになる。ささいなネタバレなので隠しておくけれども、まったく変えることのできない厳然たる《「サイテーの、サイアクの、もう、めちゃくちゃでどーしようもない」》現実が横たわっている点がいい。
重松清
『熱球』
(徳間書店ISBN4-19-861490-3)
お薦め度 ★★★★
あらまし 清水洋司38歳。母親が亡くなり、妻がボストンに留学したのを機に、出版社を辞めて小5の一人娘とともに故郷に帰ってきた。
コメント 現代っ子を描かせたら右に出るものはいないんじゃないかと、重松さんの小説を読むたびに思う。
暉峻康隆てるおか やすたか
『日本人の笑い』
(みすず書房ISBN4-622-04824-8)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 《正統な文学がふれようとしない人情とセックスの機微をとらえ、しかも洒脱な表現でわれわれを笑わせてくれる川柳は、十九世紀の日本人の風俗や習慣や性生活を如実に伝えているのみでなく、裸にしちまえば昔も今も人間は同じであるという実感にあふれている》(「まえがき」)
コメント 《門口で医者と親子が待っている》なんていう川柳を仕入れたところで何の役にも立たないし、披露する場があるわけではないのだけれど、僕はこういう類の本が好き。雅俗ぜんぶひっくるめて文化だと思う。