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勝てば官軍

2002.9.22

 大相撲九月場所は、武蔵丸と貴乃花が2敗で並び、千秋楽横綱相星決戦となった。“勝てば官軍”とはよく言ったもので、勝ち続ける貴乃花に難癖をつける人はいないようだ。そうなると天邪鬼の虫が動き出すのまる三なので、ここで犬の遠吠えをしたい。

◆難癖その1:13日目 対千代大海戦

立ち合いで大きく身をかわし、それでも残った千代大海を引き技(決まり手は引き落とし)で下した一戦。どうしてあんなことしたのかが理解不能である。貴乃花の美学または哲学として、正々堂々があると思っていたのだが、そうでもないらしい。一夜明けた14日目の中継で、実況の刈屋富士雄アナは「報道陣には何も語りませんが(註:今場所の貴乃花は勝っても負けても一言も喋らないそうだ)昨日の取り組みが優勝への執念を雄弁に物語っています」旨のことを言っていたが、それでいいのか? 勝ち星を挙げて優勝することよりも、横綱らしい相撲を取ることのほうが先決ではないのだろうか。
国技館の観客にもそういう思いはあったらしく(と勝手に推測するが)、魁皇が武蔵丸に勝ったときと比べると格段に拍手をしている人が少なかった。特に、赤房下時計係審判後方の客はほとんど拍手していなかった。

◆難癖その2:14日目 対魁皇戦

不思議なものを見た。右四つに組んで動きが止まってから左上手投げが決まるまでの間に、「上手投げを打つぞー」というような仕草を貴乃花がクイックイッとしたのだ。これが解せない。逆の動きをしていて重心が移ったところを上手投げという攻めはよく見るが、上手投げの動きを見せておいて決まるのは初めて見た(次にかける技と同じ動きをするのさえ初めて見た)。相手の上手を切りにいったのかなぁとも思ったけれど、これは左肩ではなくて右肩が上がるようだ。

◆難癖その3:後半の強さ

前半の相撲を見ていて、「後半大丈夫かなぁ」と思った。右膝が完治していないような感じは受けなかったが、明らかに握力が衰えていた。回しを切ることはあっても、切られる貴乃花を見た記憶はなかったのに、よく切られていた。平幕力士にも辛勝だったのだけれど、三役クラスになってもなんとか勝ち続けている。不思議と言えば不思議である。