2002.12.6
12月3日に改暦が行われたことがある、という話を小耳に挟んだ。初耳だったので、もうちょっと調べてみようと思い、図書館で『暦入門』(渡邊敏夫/雄山閣/1994年刊)を借りて読んでみると――
明治5(1872)年11月5日に、「それまでの太陰太陽暦――天保15(1844)年に施行された天保暦――を廃して明治5(1872)年12月3日をもって明治6年1月1日とする」という詔書が発布された。
というようなことが書いてあった。ふーん。
話は変わるけど、10月を英語で言うと“October”だ。ところが、この“oct(a-)”というのは――octopusとかoctaveとかoctagonなどで解るとおり――“8”を表す接頭語である。
“8”なのになんで“10”?
というのが長年の疑問であった。この本を読んでみたところこの疑問が氷解したので、今日はちょっとしたトリビア講座。
紀元前8世紀頃、Numa Pompiliusという王様が、1年12ヵ月の名前を以下のように定めた。
順 | 名前 | 日数 | 接頭語(ラテン語) |
1 | Martius | 31 | uni- |
2 | Aprilis | 29 | bi(n) / du(o)- |
3 | Maius | 31 | tri- |
4 | Junius | 29 | quart- |
5 | Quintilis | 31 | quint- |
6 | Sextilis | 29 | sext- |
7 | September | 29 | sept- |
8 | October | 31 | oct(a)- |
9 | November | 29 | non- |
10 | December | 29 | decim- |
11 | Januarius | 29 | |
12 | Februarius | 28 |
このとおり、Octoberはちゃんと8月になっているほか、月の順番と接頭語が(だいたい^_^;)一致している。
時代は大きく下がってJulius Caesarの時代。暦について“うるう”の処理をおざなりにしていたので、第1の月Martiusが(もともとは春なのに)夏に、第7の月Septemberが(もともとは秋なのに)冬になってしまっていたそうだ。これを調整するため、紀元前46年を455日とするとともに、暦家Sosigenesに暦法の制定を命じた。このとき、1年の始まりをJanuariusに変更したそうだが、これは――日本で4月が年度始めであるように――当時のローマでは第11の月ヤヌアリウスが年首の扱いになっていたため。このとき、第7の月(もともとの第5の月Quintilis)を自分の名前から採ったJulyにしてしまった。
話はもう少し続く。
カエサルの息子Octavianusが、紀元前27年にローマ元老院から贈られた称号Augustus(“尊厳”の意)にちなんで第8の月(もともとの第6の月Sextilis)をAugustにしてしまった。さらに、小の月であることを嫌って大の月に直してしまった。
こうして制定されたのがユリウス暦で、結局、月の名前は以下のようになった。
順 | 名前 | 日数(Augustus) | 日数(Julius) |
1 | January | 31 | 31 |
2 | February | 28or29 | 29or30 |
3 | March | 31 | 31 |
4 | April | 30 | 30 |
5 | May | 31 | 31 |
6 | June | 30 | 30 |
7 | July(Quintilis) | 31 | 31 |
8 | August(Sextilis) | 31 | 30 |
9 | September | 30 | 31 |
10 | October | 31 | 30 |
11 | November | 30 | 31 |
12 | December | 31 | 30 |
こういうわけで、接頭語と月の順番が狂ってしまったというわけ。もひとつ付け加えると、うるう日が挿入されるのも大晦日のあとであるとも言えるのだ。
ついでに“うるう年”についてのトリビアも。
地球が太陽の周りを1周する周期は365.242190日=365日5時間48分45.22秒。この端数が問題で、4年経つと0.242190日×4=0.968760日≒1日になるのでうるう年が設けられる。
ところが、100年経つと0.242190日×4=24.2190日。正直に4年に1度 うるう年を設けていくと、1日多くなってしまうので、100年に1度うるう年はない。さらに、400年経つと0.242190日×400=96.87600日となり、0.87600日に応じて うるう年になる。
ごちゃごちゃと書いたけれど、整理すれば――
4年に1度うるう年があるが、100で割り切れる年はうるう年ではない。ただし、400でも割り切れる年はうるう年
ということになる。なので、2000年はうるう年だったけれども、2100年はうるう年ではないのだ。2年前に“2000年問題”というのがあったけれど、コンピュータの進歩があと100年早かったら(あるいは遅かったら)、「4で割れるのにうるう年じゃない」というもう一つの問題が発生したかもしれなかったのだ。
現在では、ユリウス暦をさらに改良したグレゴリオ暦に従ってこんな処理をしているわけだけれど、それでも、10万年たつと3日ずれる――春分点通過と春分の日が3日ずれる――そうだ。そのせいか、1972年以降、うるう秒というのができた。一番最近では、1998年から1999年に変わるとき、1998年12月31日23時59分60秒というのが挿入されている(実際には世界標準時で行われるので日本時間1999年1月1日8時59分60秒)。詳細はこちら。