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NHKとまる三の乖離かいり

2003.2.8

 2003年2月1日が、NHK放送開始から50周年だったことで、3日から7日の総合テレビ20時台21時台は特別番組だった。ドラマ・バラエティ・紅白・スポーツ・技術・インタビュー・名場面・挑戦といったテーマで45分番組が10本放送された。

 6日まではなかなか面白く見ていたのだが、7日の特別篇2本「名場面」と「挑戦」は意外だった。

 名場面というのは、1984年の第35回紅白歌合戦を最後に引退する都はるみさんに対して鈴木健二アナがアンコールを強要した^_^;シーンと、連続テレビ小説『おしん』でおしん(小林綾子)が筏に乗って親元を去るシーン。

1984年の紅白での出来事をおさらいすると、大トリだった都はるみさんは『夫婦坂』を熱唱し、歌い終わったあとは放心状態だった(ようにまる三には見えた)。どこからともなく湧き起こる「アンコール、アンコール」の声に反応して鈴木健二アナがしゃしゃり出て来^_^;、「私に1分間だけ(都はるみさんを説得する)時間をください」という名(迷?)セリフを言ったあと、2曲歌うことを固辞していた都さんを説得にかかった。(今、冷静になって考えてみると、アンコールを要求する声もどーも嘘くさい^_^;。)けっきょく都さんは、なしくずし的に演奏が始まった『好きになった人』を歌う羽目になった。ついでに言うと、総合司会アナが、「都はるみ」と言うべきところを「美空……」と言ってしまい退局に追い込まれた回でもある(なぜ「美空(ひばり)」と言ってはいけないのかは残念ながらよくわからない)。

 まる三個人としては――都はるみさんはあまり好きでないほうに分類されてしまうのだが――『夫婦坂』の熱唱は感動的だった。でも、そのあとに起こったことは、“みそをつけた”とずーっと思っていた。事実、これまで酒の席などでこの話題が出ると、鈴木健二アナの行動は“失態”という感想を持つ者が大半だった。

 ところが7日の放送では、「80%という高視聴率をたたき出した」名場面という位置づけだったので、これは意外だった。

 

 挑戦というのは、水俣病報道で“お役人”に突撃取材を敢行した記者と、水中撮影技術を確立したカメラマンの話。

水俣病に対する行政の対応が遅れたのではないかという疑念を持って、熊本県知事や厚生省(当時)の課長を突撃取材し、言い逃れもできなくなった被取材者が激昂する様を写して“言外の言”(ゲスト大林宣彦監督のコメント)を茶の間に届けた記者の話。

『ボーリング=フォー=コロンバイン』(監督:マイケル=ムーア)を思い出してしまったけれど、「今のNHKにそういう記者がいるの?」と質問したくなってしまった。NHKのニュースを見ていると、足で稼いだわけではない“発表モノ”が圧倒的に多い。先輩を見習ってもっと頑張って欲しいなぁ。

 

 『おしん』でおしん(小林綾子)が筏に乗って親元を離れるシーンの秘話(撮影当時、すでに筏による木材輸送は途絶えていたので町役場を中心に奮闘した)とか、水中撮影を実現するためにカメラ(ゼンマイ式:撮影途中にねじ巻きが必要)を収めるための防水筐体開発秘話は、まるで“誰も取り上げてくれないから自分たちでやってしまった『プロジェクトX』”だった。