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原題と邦題

2003.2.19

 18日の『クローズアップ現代』(NHK総合/月〜木19:30〜19:55)を見た。この日は、「氾濫する“カタカナ語”〜始まった言い換えの試み〜」と題して、インフォームド=コンセント・バリアフリー・ライフラインなど、特に高齢者にとって不親切な“カタカナ語”の言い換えについて紹介していた(ゲストは井上ひさしさん)。ちなみに、国立国語研究所外来語委員会の提案「分りにくい外来語を分りやすくするための言葉遣いの工夫についての提案(中間発表)」(PDFファイルですので、Adobe Acrobat Readerが必要です)では、納得診療・障壁除去・生命線となっている。

 そのなかで、洋画の題名が“英語そのもの”だという報告があった。

 たとえば、『ボーン=アイデンティティ』という映画。“Born Identity”だと思っていて、「生れてきた存在証明」なんて勝手に思っていたのだけれど、原題は“The Bourne Identity”で、Bourneが主人公の名前だった^_^;。「Bourneの存在証明」だったのだ。

 映画配給会社(UIP Japan)の宣伝部長は「邦題を付けると、若い人が引いてしまうんじゃないかという怖さはありますよね」とのたまっていたが、それは自分たちの日本語能力の無さを反省するべきだろう。実際、原作本は『暗殺者』(R.ラドラム/山本光伸/新潮文庫全2冊)という邦題が付いている。

 僕はこうやって与太話を綴っているわけだが、不特定多数を対象にした文章を書くうえで、「自分の親が読んでもわかる文章」という基準を頭の隅に置いている。そうなると、“カタカナ語”はなかなか使えなくなるのだ(今回も、最初はタイトル・エピソードと書いたものを題名・報告と書き換えた)。

 世間一般がどう流れていくか分らないけれど、僕は“カタカナ語”少なめを目指します。

 

 ここからは余談。
『アンドリューNDR114』(監督:クリス=コロンバス/出演:ロビン=ウィリアムス)というのは邦題です。原題は“Bicentennial Man”。拙訳すると、「200年生きた男」になります。御覧になって結末を知っている方は「あー」と納得するでしょう。原題のままだと結末が分ってしまうので、うまく付けたなぁと思いました。

 さらに余談。
「じゃあ邦画を外国で公開するときの名前は?」という話。クイズ形式にしてみました。表中をドラッグすれば答えが現れます。

洋題 原題 ヒント(?)
Spirited Away 『千と千尋の神隠し』(宮崎駿2001) 第76回アカデミー賞ノミネート
Ballad of The NARAYAMA 『楢山節考』(今村昌平1983) 1983年カンヌ映画祭グランプリ
High and Low 『天国と地獄』(黒澤明1963)  
Violent Cop 『その男、凶暴につき』(北野武1989)  
The Eel 『うなぎ』(今村昌平1997) 1997年カンヌ映画祭グランプリ
Merry Christmas Mr. Lawrence 『戦場のメリークリスマス』(大島渚1983)  
Sting of Death 『死の棘』(小栗康平1990)  
Fireworks 『HANA-BI』(北野武1998) 1997年ベネチア映画祭金獅子賞
The Twilight SAMURAI 『たそがれ清兵衛』(山田洋次2002)  
Gate of Hell 『地獄門』(衣笠貞之助1954) 1954年カンヌ映画祭グランプリ