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アニメーション作家 山村浩二

2003.5.8

 4日の『情熱大陸』(TBS/日曜23:00〜23:30)は、今年の第75回アカデミー賞の短編アニメーション部門において『頭山(Mt. HEAD)』がノミネートされたアニメーション作家・山村浩二さんを取り上げていた。

この番組は、1回につき1人を取り上げて密着取材を敢行し、その人の為人ひととなりの一端を伝えるもの。たとえば最近は、俳優・大杉漣さん、JRAの“新人”騎手・安藤勝巳さんなどを取り上げていた。

 分業またはCG全盛の時代にあって、たった二人(2年前までは一人)で原画を描いてコツコツ撮影している姿は妙に新鮮だった。

 印象的だった点をいくつか。

  • 上映時間10分の『頭山』のために描いた原画が1万3806枚。
  • 「アカデミー賞って凄いンですね」と本人が認めていたこと。会話の流れとしては、アカデミー賞にノミネートされたら「掃除のおばさんから宅配便のお兄さんにまで声をかけられる」ということなのだけれど、僕の勝手な思い込みとしては、「東洋の片隅で活動しているアニメーション作家にまで目を配ってるんですね」と取れた。
  • 若手のためのワークショップ。予定の2時間を大幅にオーバーして4時間後に終了。次世代を育てることにも貪欲なんですね。
  • 文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞受賞記念の立食パーティで、入れ替り立ち替り取材陣が殺到するため皿に取った稲荷寿司をなかなか食べられなかった。そこで、『情熱大陸』の取材陣は「食べてください」と言って稲荷寿司を頬張るシーンをカメラに収めた(さらに、アカデミー賞授賞式会場に向かうリムジンにも同乗していた)。「“密着”だなぁ」と思ったまる三でした。
  • 他のノミネーティたちが、「オスカーをステップにして長編アニメ――換言すれば金のかかる作品――を作りたい」と述べているのに対して、山村さんにはそういう野望(?)はないようだった(そのものズバリの質問&応答がなかったので確信は薄いけれども)。家内制手工業的な短編アニメが好きなようだ。「これで金持ちになれるとも思わないし、想像もできない」というのが本人の弁。
  • 長女 季理ちゃん(7歳)が最後に登場したのだけれど、何を訊いても「ウン」しか言わない。いや、責めているのではなくて微笑ましいなぁと思ったのでした。
同年代の贔屓目”が多分にあることは否めないが、「いい人だなぁ」と思いました。

「頭山」というのは、もともと落語です。
けちん坊な男がさくらんぼを食べたけれども「種を出すのがもったいない」と言って種も飲み込んでしまいます。そのうち頭のてっぺんに桜が芽を出す。これまたもったいないのでそのままにしておくと、やがて見事な桜が咲きだします。近所で(?)評判になって花見の名所となり、男の頭の上で夜毎ドンチャン騒ぎが繰り広げられるようになります。あまりのうるささに困った男は、桜を根こそぎ抜きますが、その窪みに水が溜まって“頭ヶ池”になってしまい、今度は頭ヶ池で船遊びが始まります。あまりのうるささに悩んだ挙句、男は頭ヶ池に身を投げて自殺するという、SFチックな落語です。

5月23日、パイオニアLDCから作品集DVDが発売されるそうです。このオチがどうなるかものすごく気になります。買っちゃおうかなー。

最優秀賞に与えられる人間の形をしたトロフィーを“オスカー”と呼ぶのは、初期のスタッフの一人が「まあ、オスカー叔父さん(伯父さん?)にそっくり」と言ったせいだそうです。
アカデミー賞の投票結果を集計し、発表当日まで結果を保管しているのは会計事務所だそうです。
ちょっとしたトリビアでした。