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受験生は大変だ

2003.7.6

 4日の『タモリ倶楽部』(テレビ朝日/金曜24:15〜24:45)は――

本当にあった怖い入試問題

 だった。どういうことかというと、最近の大学入試問題の中から「なんじゃこりゃ! 出題意図がよくわからん」というような設問を紹介していた。司会は下平さやかアナ(早稲田大学卒業)で、タモリ(早稲田大学中退)のほかに眞鍋かをり(横浜国立大学卒業)鴻上尚史(早稲田大学卒業)石井苗子(上智大学卒業・聖路加看護大学卒業・東京大学大学院在学中)ふかわりょう(慶應義塾大学卒業)がパネラー。『笑う入試問題』(角川書店)という著作もある新保信長さん(東京大学卒業)をコメンテーターに迎えた。

項番 大学名 年度 設問
1 静岡大学
(英語)
2000 日本の千円札を頭の中にイメージしてください。あなたがイメージした千円札について、例えばその表・裏のデザインなどを100語程度の英語で書きなさい。
2 多摩美術大学
(小論文)
1998 あなたの前に1本のコカコーラが配られています。それによって引き起こされる自由な考えを1200字以内で記しなさい。
3 大阪大学
(英語)
2002 21世紀に世界を大きく変える原動力となるものは何であろうか。あなたが予想するものをひとつあげて理由とともに70語程度の英語で述べなさい。
4 國學院大学
(地理)
2001 山形新幹線は次のどの駅で東北新幹線から分れているか。正しい駅をア〜オの中からひとつ選びなさい。
ア 宇都宮  イ 仙台  ウ 白河  エ 福島  オ 米沢
5 國學院大学
(地理)
2001 実在しないニュータウンをひとつ選びなさい。
1 大宮  2 港北  3 千里  4 多摩  5 千葉
6 上智大学
(小論文)
2002 次のテーマについて思うところを書きなさい(1200字)
       「運動」
7 鹿児島大学
(小論文)
1998 もしあなたがイースター島に生まれていたならイースター島の崩壊を避けるためにどのような行動ができたと思いますか。
8 京都教育大学
(国語)
1997 あの<男らしい>タンクタンクローがイガグリくんさえも手塚治虫風の光を目に入れると女々しくなってしまう。イガグリくんは本当に勝負の前の緊迫感として汗をかいているのに、なんとなく自意識の怯えを表現しているように見えてしまうのである。(一部略)この説明にふさわしいイガグリくんの表情を解答欄に書け。
9 千葉大学
(小論文)
1999 ドラえもんの道具をひとつ選んで、それが実現可能か検討しなさい(一部略)
10 神奈川大学
(英語)
1999 あなたにとって富士山とはどのような山ですか。
11 関東学院大学
(国語)
2002 宮沢賢治は、ある夜、眼前に広がる麦畑の畝に飛び込んで行き、一時間ほど抜き手で泳ぐように走り回ったあげく「銀の波を泳いできました。ああ、さっぱりした」と言ったというが、その理由は?(一部略)
 1.運動不足を補おうと考えたから
 2.想像の海を泳いでみようと思ったから
 3.奇抜な行動で人を驚かせたかったから
 4.麦畑に反射する光の海に心惹かれたから
 5.麦畑に神秘的な奇跡(ミステリーサークル)を演出したかったから
 6.自然との交感を求めたかったから
12 福井大学
(小論文)
2000 次のような人生相談に対してあなたはどう答えますか。
「30歳代の主婦です。2年前に一戸建ての家に引越し、柴犬を飼い始めました。最近困ったことに、近所の人が一日に何度も残飯やお菓子を持ってきて犬にやるのです。犬も人間と同様、糖尿病にもなりますし、虫歯も心配です。私としては、近所の人にハッキリと言いたいところですが、新参者の私がそんなことを言うと気まずくなりそうです。(一部略)何か良い知恵はないでしょうか(A子)

 一体全体どーなってるんでしょ(ーー;)。受験生も大変ですね、ホントに。

 項番11が紹介されたとき、自分の文章が入試問題に使われたことがあるという鴻上さんは――

解答見たんですけど、ボク、そんなこと思ってなかったですよ。

 とコメントした(清水義範さんの、まったく同じ趣旨の文章を『小説現代』2001年12月号「なにはともあれ国語 第2話 国語入試問題必敗法」で読んだことがある。正確には模試だったけれども)。もうひとつ印象的だったコメントは、項番8および9のときの新保さんのもので――

(こういう出題をすれば)新聞に取り上げられますから

 だ。

 受験生も大変だけれど、これを指導する側も大変だと思う。城南予備校池袋校(4日の借りたロケ地)の村上貴夫先生に同情してしまう。ちなみに、項番2に関して「『引き起こされる』というのは、連想力・イメージの広がりを要求されています。そこに注目するのは良いことですが、こだわりすぎると高得点は望めないと思います」旨の指導があった。

非常に面白かったのだけれども、項番2のとき、「こんな状況だったら“自由な考え”じゃないよね」「どう配られたかが問題なんじゃないですかね」「ペプシじゃダメ?」などと出題意図を紐解いていこうとしていく中で、「コカコーラから連想することを書けばいいのよ」「哲学出てるから……」「ほーら法学だ、理屈っぽい」などと否定ばかりしていた石井さんがミスキャストだったような気がします。言い換えれば、考えることよりも教えてもらうことが好き(さすが大学三つ目)、あるいは、言われた通りにすればいいのよ(さすが東京大学大学院≒権威主義)といったところでしょうか。

 最後に、こういう問題に遭遇してしまったときの心構えについて、城南予備校池袋校校舎長 千島克哉さんからアドバイスがあります。

動揺せずに、不貞腐れずに、積極的に解答しましょう。