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三行書評 第158回

2004.7.26

 五つ星が満点。

佐々木千賀子
『立花隆秘書日記』
(ポプラ社ISBN4-591-07659-8)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 1993年から1998年にかけて立花隆氏の秘書を勤めた佐々木さんのネコビルの記録。同期間には、立花隆言論生活25周年、田中角栄死去、阪神大震災、地下鉄サリン事件、『耳をすませば』声優初挑戦、東大先端研客員教授、立花隆検査入院といった事柄が起こっている。
コメント 立花氏と著者との距離感――心酔して崇拝するでもなく金のためと割り切って仕事だけをするでもなく――が良いという印象が残った。佐々木さん自身の来し方もユニークなものなので、佐々木さんに焦点を当てて読んでも充分楽しめる、“一冊で二度おいしい”的お得本。
団鬼六
『真剣師小池重明』
(幻冬舎アウトロー文庫ISBN4-87728-459-1)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 現金を賭けて指すのが“真剣将棋”。強豪になると金主が登場してきて六桁の現金が動くこともある。そんな将棋ギャンブラーの中で無類の強さを誇ったものの、私生活では人妻と三回の駆け落ちをしたり寸借詐欺を繰り返すなど破天荒振りを見せたこいけ重明こいけ じゅうめいの生涯を描く。
コメント 小市民的な生活をしている僕にとっては驚きの人生だ。ほんの少しの憧れはあるものの真似できないという前提はあるわけで、そんな埒外にいる者(アウトロー)の人生を覗くことができる著作。
読売新聞運動部
『20世紀スポーツ列伝』
(中央公論新社ISBN4-12-003046-6)
お薦め度 ★★★★
あらまし 嘉納治五郎・双葉山・沢村栄治・古橋広之進・白井義男・円谷幸吉・青木功・植村直己・三浦知良・長嶋茂雄・人見絹枝・前畑秀子・樋口久子・伊藤みどり・伊達公子が活躍した時代を描き出すスポーツ読み物。一九九九年後半に読売新聞運動面に連載したものに加筆。
コメント 双葉山と長嶋茂雄については、競技そのものが持っている“閉鎖性”によって《世界に挑んだ日本人》(副題)とは乖離しているけれど、それぞれの人となりについてはたいへん勉強になった。『知ってるつもり!?』の活字版といったところか。
松本一路
『あの名場面の裏側』
(青春出版社ISBN4-413-03402-3)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 現役のNHKアナウンサーが暴露(?)するスポーツ中継の裏側。失敗談・快心の中継などを疲労するとともに、実況に関するノウハウも披露する。
コメント これからスポーツ中継アナウンサーを目指す人はもちろんだけれども、若手や“お粗末な実況アナウンサー”にも熟読していただきたい一冊。
長井好弘
『使ってみたい落語のことば』
(アスペクトISBN4-7572-1040-X)
お薦め度 ★★
あらまし 《ぜひとも日常会話の中で使ってほしい「落語のことば」を選び出し、背景にある文化、歴史、エピソードとともに、その輝きを探ってみました。》(「まえがき」から)。
コメント 多少なりとも落語に詳しい僕にとっては、意見を異にする“”ことばが多いようだ。なによりも、「使えんだろ」という言葉ばかりでがっかりした。