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三行書評 第163回

2004.8.30

 五つ星が満点。

佐伯真一
『戦場の精神史 武士道という幻影
(日本放送出版協会ISBN4-14-001998-0)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 《『平家物語』「越中前司最期」や『太平記』「阿保・秋山河原軍の事」をはじめとする、数多くのだまし討ちシーンを分析することから、謀略と虚偽を肯定する戦場独特の倫理感覚を明らかにする。「武士道」の虚像を剥ぐ画期的論考。》(見返しから)
コメント いやぁ目からウロコでした。平安末期から戦国時代にかけてはキレイ事なんて通用しません。戦に勝つことこそが善なんですよ。それが江戸時代の『葉隠』や明治時代の『武士道』(新渡戸稲造)によってどう変遷したかまで考察している。
山本博文
『切腹日本人の責任の取り方
(光文社新書ISBN4-334-03199-4)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 『会津藩家世実紀』『加賀藩史料』などに見られる切腹を取り上げて(江戸時代の)サムライが従わなければならなかった倫理と“責任の取り方”を明らかにする。
コメント 責任の取り方という点に関して江戸時代が現代に及ぼしている影響の大きさを痛感した。本書の守備範囲外ではあるけれど、官僚制度(の倫理観)っていうのも江戸時代の役人たちに根差すものなのかも知れませんよ。
立花京子
『信長と十字架』
(集英社新書ISBN4-08-720225-9)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 《「天下布武」の理念を掲げて、ポルトガル商人やイエズス会をはじめとする南欧勢力のために立ちあがった信長は、彼らによって抹殺された――。信長研究に新風を吹きこんできた注目の研究者が、この驚愕の結論を本書で導きだした。(以下略)》(見返しから)。
コメント 著者は在野の信長研究家。在野の研究家だからこそ提唱できる斬新な結論。「○○首相退陣の黒幕はCIAだった」みたいな結論なので面食らうこと甚だしいのだけれど、「そうかもしれない」と思わせる考察が繰り広げられている。でもまだ半信半疑かな。

眼鏡が壊れたので疲れる読書でしたけれども、今週は読書大充実の1週間でした。決して採点が甘いわけではありません。