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三行書評 第20回

2001.10.15

 五つ星が満点。

中野不二男
『親子で覗く最先端』
(文藝春秋ISBN4-16-351850-9)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 「温度差発電」「太陽電池」「イオン」「オーロラとプラズマ」「レーザー」「地震波」「光ファイバー」「電話」「電波」「CDとDVD」「MO光磁気ディスク」「引力と吸血鬼の関係」「遺伝子とはなにか」「免疫反応」「臓器移植と拒絶反応」「ブーメラン」「航法装置」「ILS(計器着陸方式)」「ジェットエンジン」「ロケットエンジン」「原子と元素」「原子爆弾」「プルトニウム」「軽水炉と高速増殖炉の関係」「熔融塩炉」の23項目について、分かり易く説明されている。
コメント これは面白い。いや役に立つ。事細かに細大漏らさず全てを説明すれば分かり易いわけではないということを実感。
横田順彌
『百年前の二十世紀』
(筑摩書房ISBN4-480-04186-9)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 1901(明治34)年1月2日と3日の『報知新聞』に掲載された「二十世紀の予言」を手始めに、19世紀初頭に日本で行われた未来予測総覧。
コメント 的中しているものを集めたとはいえ、ずいぶん当たっているのが不思議である。
石川九楊
『書と文字は面白い』
(新潮社ISBN4-10-393201-5)
お薦め度 ★★★
あらまし 大阪読売新聞のコラム「潮音風声」と、京都新聞の「書の万華鏡」をまとめたもの。
コメント 連載一回について必ず図版が付いているが、副島種臣(1828〜1905)の書「帰雲飛雨」が僕のお気に入り(246ページ「渦巻き」)。床の間に飾っておきたいぞ。図版がついていて具体的な例がわかるのがありがたい。
森枝卓士
『カレーライスと日本人』
(講談社現代新書ISBN4-06-148937-2)
お薦め度 ★★★
あらまし カレーのルーツを求めて、インドの家庭へ、イギリス大英図書館へ、国会図書館へ。現状を探り歴史を紐解き、出された結果は「カレーはすでに日本料理である」。
コメント 著者の本職はフォトジャーナリスト。あっちこっち現場へ向かう身の軽さが隠し味になっている面白本。
ベッティナ=セルビー
『ナイル自転車大旅行記』
(小林泰子/新宿書房ISBN4-88008-211-2)
お薦め度 ★★★
あらまし 52歳のときにナイル川を自転車で遡った旅行記。歓待も受けるが危ない目にもあいながら源流を目指す。
コメント 翻訳本として丁寧に作られている(変なところに感心してしまったが)。引用文の出典やら個人名やらの訳注が豊富だし、写真や図版も用意してある。これは親切だ。改行が少くて“黒豆のお重”みたいなので読むのは少々骨が折れるかもしれない(全300ページ)。翻訳モノにはときどきこういう文章がある。
ロバート=エーリック
『君がホットドッグになったら』
(家素弘/三田出版会ISBN4-89583-192-2)
お薦め度 ★★
あらまし 物理学にまつわる面白話が135編。表題は「君の体を形作る物質をホットドッグに換算したら何本分か?」という、少々物騒な話である。
コメント メートルも使われているのだが、フィート・ヤードも多い。原文に忠実なのはよいが、日本の読者向けにするのであれば“メートルに翻訳”すべきではと思った。このテの本はいろいろあるので、本書でなくともよいと思う。ちなみに、三田出版会というのは慶應大学関連ではなくて事務機のmitaである。
中島義道
『うるさい日本の私』
(洋泉社ISBN4-89691-224-1)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 電車内や商店街や駅構内や銀行や海水浴場で浴びせられる騒音との闘争の記。著者はドイツ哲学専攻の大学教授である。
コメント 「『察する』美学から『語る』美学へ」というのが結論的なもの。この言葉に興味を持たなくても、街角の騒音が特に気にならなくても――幸い僕はあまり気にならないたちだが――読んでみれば目からウロコが1枚落ちるかも。

 今回は、三行書評vol.19で紹介した『活字博物誌』(椎名誠/岩波新書)で取り上げられていた本でまとめてみました。