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三行書評 第21回

2001.10.22

 五つ星が満点。

橋本治
『天使のウィンク』
(中央公論新社ISBN4-12-003000-8)
お薦め度 ★★
あらまし 『中央公論』1997年8月号から1999年12月号まで連載。酒鬼薔薇からスポーツまで、時事問題を読み解く手引き。
コメント なにやら難解である。書斎にいて事実を推理する“アームチェアディテクティブ=安楽椅子探偵”という言葉を思い出した。
宮嶋茂樹・勝谷誠彦
『不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス』
(新潮社ISBN4-10-423801-5)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 1996年秋に出発した第38次南極観測隊に同行したカメラマン宮嶋茂樹の同行記。《しらせ》から、昭和基地には寄らずに内陸1000kmにあるドームふじ基地に3週間かけて直行し、10日滞在ののち昭和基地に到着というのがだいたいのスケジュール。
コメント かなり誇張はあるようだが、観測隊の大変さの片鱗は窺える。これまであまり出てこなかったヘンなもの――たとえば女装だのモヒカン刈りだの――は興味深かった。余計なお世話だが、『週刊文春』から特派されて連載も行ったのに、なぜ新潮社から出版されているのかが最大の謎だ。
辺見庸
『眼の探索』
(朝日新聞社ISBN4-02-257335-X)
お薦め度
あらまし 「長く勤めた共同通信社を辞めてから、最初の本格的連載」(「あとがき」から)。朝日新聞読書面に1年強連載された。
コメント 「はじめに」で著者本人も書いている通り、「詩でもなく、掌編小説でもなく、随筆でもなく、論評でもなく、告発でもなく、嘆息でもなく、独白でもなく、戯言ざれごとでもなく、しかし、それらのどれにも通ずるひと連なりの文」になっているちょっと不思議な作品。以前読んだ『もの食う人びと』が面白かったので試してみたのだが、残念ながら期待はずれだった。
椎名誠
『インドでわしも考えた』
(集英社文庫ISBN4-08-749293-1)
お薦め度 ★★★★
あらまし  (1)インド人は毎食カレーを食べるのか(2)カースト制度は生きているのか(3)女性がサリーを着るのはなぜか―――以上3つの疑問を抱いて訪印したシーナの旅行記。同行した山本皓一カメラマンのカラー写真多数。
コメント 「何も予備知識をもたずまっさらな気持ちで立ち向かおう!」というのはエライ。僕はこれがなかなかできない。なんか事前に勉強しちゃうんだよね。枠に填まってしまってつまらないことこの上ない。
田中康夫
『田中康夫主義』
(ダイヤモンド社ISBN4-478-18028-8)
お薦め度 ★★
あらまし 『週刊現代』に連載した「新聞私評」を、(時系列ではなくて)テーマ別に再構成したもの。
コメント 一言でいえば「是々非々」。脚注で時事解説が載っているとはいえ、連載のリアルタイムで読みたい。
井伏鱒二
『還暦の鯉』
(講談社文芸文庫ISBN4-06-196195-0)
お薦め度 ★★
あらまし 1957年初版(新潮社)の随筆集の文庫版。
コメント 本文が195ページ、解説(庄野潤三)が15ページ、年譜が16ページ、著書目録が12ページ。他に目次があって248ページの文庫本が913円+税というのはお高くありませんか? ねぇ講談社さん。