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「〜と見られています」の不可思議

2002.1.12

 ニュースを見聞していると、ときどき不可思議な言い回しに遭遇する。

 最近妙に感じたのは、「〜と見られています」というフレーズ。具体的に言えば、奄美大島沖で見つかっ(て後に沈没し)た不審船のニュースで、「(タバコと菓子袋は)北朝鮮のものと見られています」というのを聞いた。不思議じゃありませんか? これはいったい誰がそう“見て”いるのだろう? アナウンサー? いやいや、そんなことはないでしょう。思っているかもしれないけれど、アナウンサーが思っていてもニュース価値はない。(海上保安庁を管轄する)扇千景国土交通大臣? ちょっと違うらしい。会見を聞いてみると、扇大臣も「北朝鮮のものと思われますので(以下略)」と発言しているから、かなり近いけれども微妙にズレているみたいだ。どうやら結局、海上保安庁(の匿名の人物)の見解のようだ。

 どうして、「海上保安庁の発表によると、これらは北朝鮮のものです」と言えないのだろう。外交上問題があるのならば、「……これらは北朝鮮のものです。ただし、これらが不審船から流出したものとは断定できません」とすることもできるだろうに。

 ともかく、「〜と見られています」という言い回しにはイライラする。「誰がだよ」とツッコミを入れずにはいられないのだ。

似たようなものに、「調べによりますと〜」というのがある。これを聞くたびに僕は、「調べたのは記者かい!?」とつっこんでいる。ここは正確を期して、「警察の発表によりますと〜」として欲しいのだ。

 情報源が誰なのかというのは、ニュースの信憑性を判断する上で意外と重要なのである。参考資料として『マスコミ報道の犯罪』(浅野健一/講談社文庫)を挙げておきます。