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三行書評 第48回

2002.5.7

 『いいとも』にはやっぱり宇多田照實てるざねさんが来ましたね。

 五つ星が満点。

小林弘忠
『巣鴨プリズン』
(中公新書ISBN4-12-101459-6)
お薦め度 ★★★★
あらまし 巣鴨プリズン(現在はサンシャイン60および東池袋中央公園)には多くのA級BC級戦犯が収容され、戦犯34名(A級7名BC級27名)が処刑された。そこで初代教誨師を勤めた花山信勝(金沢市宗林寺12代目住職兼当時東京帝国大学助教授)の物語。死刑囚に関する本人の回想を通して花山信勝に焦点を当てている。
コメント 教誨師として有名なのは二代目で「巣鴨の父」とも呼ばれた田嶋隆純さんらしいが、僕は花山さんのほうが好き(そういう書き方がされているからかもしれないけれど)。綿密な調査の上に書かれているので、太平洋戦争外史として面白いかも。
三谷幸喜
『ありふれた生活』
(朝日新聞社ISBN4-02-257719-3)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 現在も朝日新聞水曜日夕刊(地域により異なる)に連載中のエッセイのうち、2000年4月4日〜2001年9月18日・10月30日分をまとめたもの。ミュージカル『オケピ!』映画『みんなのいえ』制作秘話を交え、妻(小林聡美さん)飼い猫(おとっつあんとオシマンベ)飼い犬(とび)との《ありふれた生活》が綴られていく。
コメント 『モンスターズインク』で、汚染されたモンスターは毛を刈られたうえ、底を抜いたバケツみたいなものを付けられるのが不思議だった。あれは、動物用の医療用具だったんだということを、「犬の心配で、今年が暮れる」の文章および挿画(和田誠)で理解できた。基本的に
神足裕司こうたり ゆうじ
『輝く中年の星になれ!』
(講談社ISBN4-06-268324-5)
お薦め度 ★★★
あらまし なんか気恥ずかしいタイトルだが、『金魂巻』の共著者であるから、真っ正直に受け取る必要はない。「老人力」ならぬ「中年力」を身に着ける方法だ。
コメント 腹立ち日記と『恨ミシュラン』に通ずるグルメ探訪がまとめられた第三部「怒髪天を衝く」が面白い。
松崎菊也
『一瞬の沈黙』
(三五館ISBN4-88320-060-4)
お薦め度 ★★★★
あらまし さる高貴なご一家・アンダーグラウンド・政治家・マスコミなどを俎上に乗せてニュースをコントにするザ=ニュースペーパー主宰者のエッセイ。作ったコントも多数収録されている。
コメント ニュースを題材にしているから、アッというまに古くなる(再演できない)という苦労には同情してしまった。アブナイけど笑える。
井上ひさし
『ナイン』
(講談社文庫ISBN4-06-184684-1)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 放送作家であり戯作者である書き手が、東京下町を舞台に綴った短篇集。泣いて笑える16作品。
コメント いいなぁ。ラジオドラマの原作に最適だと思う。。「ナイン」「隣り同士」「新宿まで」「会食」が四天王かな。ぐりぐりの◎。
井上ひさし
『わが人生の時刻表自選ユーモアエッセイ1
(集英社文庫ISBN4-08-747252-3)
お薦め度 ★★★★
あらまし 《30年以上にわたり書きついだエッセイの中から、とりわけユーモアに富む珠玉を取り出し一冊にまとめる。(中略)エッセイで綴る鬼才の半生》という本(カバーから)。
コメント 際限きりがない》《仮寝うたたね》《縁故コネ》といった振り仮名が面白い。振り仮名どおりに読むとリズムがよいのだ。
A.ヴァール
『サッカーの歴史』
(大住良之監修/遠藤ゆかり/創元社ISBN4-422-21161-7)
お薦め度 ★★
あらまし フットボールからアソシエーション=フットボール(=サッカー)への歩みやワールドカップの発展などを、図版を多用して駆け足で説明している。日本版の出版は今年だが、原書は1990年刊行らしい。したがって、原書(原題:La belle au pied, Histoire du football)はフランス大会でのフランス優勝に触れていない。またアジアのサッカー事情についても原書では一切触れられていないので、監修者による補足がある。
コメント というわけで、本文はあまり役に立たないのだが^_^;、「資料篇」が充実している。ワールドカップのスーパースター列伝と全スコアがついている。
ジャン=フィリップ=コアント
『異端児トルシエ』
(宇田川里・吉村葉子共訳/角川書店ISBN4-04-791381-2)
お薦め度 ★★★
あらまし 1955年3月21日、パリで肉屋の息子として誕生してから2001年コンフェデレーションズ杯までのトルシエ半生記。
コメント 思い起こせば、3−5−2という戦術やさまざまな発言を巡ってバッシングが起こったこともあったが、結局、トルシエは成功しつつあるように思う。日本代表は確実に強くなっていると思う。そして、ひとつの答えが6月に出るだろう。