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三行書評 第68回

2002.10.7

 五つ星が満点。

梁石日ヤン ソギル
『血と骨』
(幻冬舎ISBN4-87728-210-6)読了
お薦め度 ★★★
あらまし 飲む打つ買う、おまけに金に穢く、最終的には腕力にモノを言わせる“ろくでなし”金俊平の物語。第11回(1998年)山本周五郎賞受賞作。
コメント 金俊平は梁石日さんの父親がモデルらしいので、ろくでなしと大きな声で言うのは憚られるけれども、そう言うしかない(『本の雑誌』2000年4月号誌上で行われた「最強のろくでなし選手権」において、金俊平は準優勝している)。劇的感動的な挿話があるわけではないし、実は救いもないのだが、なにやら惹きつけられて読んでしまった。
桐生操
『やんごとなき姫君たちのトイレ』
(TOTO出版ISBN4-88706-060-2)
お薦め度
あらまし 「西洋かわや物語」という副題が付いているけれども、ちょっと看板に偽りあり。トイレの話は全体の四分ノ一ほどしかなく、あとは風呂・化粧・下着の話。
コメント それはそれで面白いのだけれど、トイレ目的で読んだのでがっかり(そうでないとしても★★くらい^_^;)。巻末に参考資料一覧が載っているけれど、ここのエピソードの出典はまったくわからない。さらにこの参考資料をよく見ると孫引きが多いようだ。
渡辺信一郎
『江戸の女たちのトイレ』
(TOTO出版ISBN4-88706-086-6)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 古川柳研究30年の著者が選んだ川柳で、江戸時代のトイレ事情を解説する。
コメント 古川柳というのは、真っ当な(?)歴史書には出てこない民衆文化がよくわかる便利なものだなぁと感心した。 民俗資料として出典を明示し、年代を明らかないしなければいけないという姿勢やよし(詳細は「あとがきにかえて」に詳しい)。
坂本菜子
『世界のトイレ快道を行く』
(TOTO出版ISBN4-88706-120-X)
お薦め度 ★★★
あらまし 著者の職業は、公共トイレコンフォートステーションを設計するコンフォートスタイリストで、日本トイレ協会幹事。東西、果てはスペースシャトルのトイレまで研究し、快適空間コンフォートステーションとしてのトイレを設計している。カラー図版多数。
コメント 基本的に、きれいなトイレ・斬新なトイレしか出てこない。それはそれで見どころだろうけれど。
小屋一平
『トイレはどこですか?』
(心交社ISBN4-88302-579-9)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 「トイレはどこですか?」の現地語表記・片仮名発音も交えて、いろいろな国(南北アメリカ大陸を除く)のトイレを紹介。写真多数。形状・後処理・消却・便座配置・扉隠蔽率・仕切り隠蔽率で分類しているところが学術的。ウタリクリエイツ筑波研究所(tsukuba.utari.net/)から生まれた本。
コメント 世界的には、しゃがみこみ式にもかかわらず金隠しがない便器が多いことにびっくり(手前向きの配置が多いことも)。西洋では大便と小便を同時にはしないと聞いたことがあるのだけれど、アジアでもそうらしい。

 9月27日深夜の『タモリ倶楽部』(テレビ朝日)に触発されて始まったトイレシリーズは以上です。あ、TOTO出版というのは、アノTOTOの関連企業らしいです。