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三行書評 第73回

2002.11.11

 五つ星が満点。

藤沢周平
『義民が駆ける』
(講談社文庫ISBN4-06-263931-9)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 徳川12代将軍家慶の治世、荘内藩酒井家→長岡藩牧野家→川越藩松平家→荘内藩の「三方国替え」が発せられた。石高は、長岡7万石に対して川越と荘内が15万石だが、荘内は実収21万石なので、荘内藩には良いことがない。騒動の中で、荘内の農民たちが国替えに反対して直訴するために江戸を目指した。「荘内天保義民」である。その顛末を記した歴史小説。
コメント 藤沢さんの故郷では有名な話らしいが、旗印となった「雖為百姓不仕二君百姓なりといえども二君に仕えず」に《媚がある、とありていに言って私には不愉快だった》など、《疑問もしくは反感といったものを抱くようになった》というのが藤沢さんらしい(「中公文庫版あとがき」より)。 どうもうまく説明できないが、藤沢ワールドであることに間違いはない。
藤沢周平
『たそがれ清兵衛』
(新潮社ISBN4-10-329607-0)
お薦め度 ★★★★★
あらまし “剣の達人”をテーマにした連作小説集。下級武士と思慕(対女性とは限らない)をテーマとして加えても良いかもしれない。表題作が山田洋次監督初の時代劇として映画化された。
コメント 「仕置人」というわけではないけれど、中村主水みたいな人がたくさん出てくる小説集。しんみりしたい人にお薦め。
藤沢周平
『暁のひかり』
(文春文庫ISBN4-16-719215-2)
お薦め度 ★★★★
あらまし 博徒・人足・女郎・侠客など、「はぐれ者」を主人公に据えた短篇集。
コメント ハッピーエンドの話はないので、ぱっと明るくなりたいときには止めておいたほうがいいけれど、しんみりしたいときにはお薦め。
フォートキシモト
『2002 KOREA/JAPAN』
(エクスナレッジISBN4-7678-0133-8)
お薦め度 ★★★
あらまし 写真集ではあるが、単行本サイズだし、紙質も抑えてある(?)ようだが、それでも2800円。
コメント 当然ながらベッカム様の写真は多め。ロベルトカルロス(ブラジル)の太ももの太さにびっくり。
フォートキシモト
『熱狂』
(NTT出版ISBN4-7571-7018-1)
お薦め度 ★★★★
あらまし こちらは光沢紙A4サイズ写真集。
コメント 写真点数はこちらの方が少ないが、試合結果が載っている点と、日本代表中心という傾向があるようなので★を一つ増やしてみた。
元川悦子
蹴音しゅうおん
(主婦の友社ISBN4-07-234614-4)
お薦め度 ★★★
あらまし 1998年夏のトルシエ監督就任から日韓共催ワールドカップが終わった2002年7月までの四年間のドキュメント。
コメント スター選手といえども活躍できなければ酷評する外国メディアに理解を示すなど、ある程度の見識を備えたドキュメントだとは思うが、《(H組に)フランスやアルゼンチンといった強豪が入らなかったことは幸運と言えるだろう》という記述には首を傾げてしまった。「イングランドやポルトガル」ならば解るけれど……。
泉麻人・町田忍
『ホーローの旅』
(幻冬舎ISBN4-344-00214-8)
お薦め度 ★★★★
あらまし 「由美かおるのアース蚊取り線香」「大村崑のオロナミンC」に代表される“琺瑯ほうろう看板”にまつわるエトセトラ。各地の看板採集はもちろん、大村崑さんや製作者へのインタビューなど盛りだくさん。
コメント ホーローは丈夫なのだそうだ。
福井直秀
『「笑い」の技術』
(世界思想社ISBN4-7907-0942-6)
お薦め度 ★★
あらまし 「面白く話す」というよりも、「面白い話を創作する」ための技術解説書。手っ取り早く言えば、新作落語を作るための手引きである。
コメント 本当のことをおもしろ可笑しく表現するために手に取ったので、★×2という評価は低すぎるとは思う。演習問題が多数載っている(というよりもそれが中心な)ので、まじめにやればかなり身に付くかもしれない。

 『2002 KOREA/JAPAN』は、『熱狂』と並べるために先週から引っ越してきました。あしからず。