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三行書評 第94回

2003.4.7

 五つ星が満点。

舟越健之輔
『黒枠広告物語』
(文春新書ISBN4-16-660292-6)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 著名人が亡くなったとき、告別式のお知らせなどをするのが「黒枠広告」。広告代理店で黒枠広告の営業もしたことがある著者が繰り広げる黒枠広告総まくり。
コメント 偽の黒枠広告を出された人や、死亡広告を出された高知新聞、父十藏の黒枠広告で贈花贈品お断りの先駆者となった伊藤博文、《僕本月本日を以て目出度めでたく死去仕候間つかまつりそうろうあいだ此段廣告このだんこうこく仕候也つかまつりそうろうなり/四月十三日/緑雨 斎藤賢》と出稿した斎藤緑雨、渡良瀬川流域の一般住民が名を連ねた田中正造などなど。
椎名誠
『蚊學ノ書』
(夏目書房ISBN4-7952-5778-7)
お薦め度 ★★★★
あらまし 1985年、TBSのドキュメンタリー『シベリア大旅行』で訪れた夏のシベリアで“蚊”に取り付かれた著者が贈る蚊にまつわるエトセトラ。世界各地――シベリア・アラスカ・アマゾン――の蚊事情、ことわざ・落語・なぞなぞなど。
コメント 椎名さん以外の文章も多いので、[編]かも知れない。それはともかく、僕も蚊のファンになりそうになってしまった。今年の夏はじっくり観察してみるか。
斎藤美奈子
『あほらし屋の鐘が鳴る』
(朝日新聞社ISBN4-02-257305-8)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 『uno!』や『pink』や『朝日新聞』夕刊に、1996年から1998年にかけて連載した評論や書評をまとめたもの。表題の「あほらし屋の鐘」とは、上方育ちの友人に教えてもらったものだそうで、《力の抜けそうなひとこと》を聞いて《笑うでも怒るでもない》反応しかできないときに頭の中に鳴り響く《カーン》という鐘のだそうだ。
コメント やはり斎藤さんは稀代の読み手(かつ書き手)だと思う。『失楽園』(渡辺淳一/講談社)を《「ブルーガイト」+「ファッション雑誌」+「グルメガイド」+「ハウトゥーセックス」=『失楽園』》と喝破するあたりでそう思う。
そんな一端を垣間見ることができる文章として、重松清の直木賞受賞作『ビタミンF』(新潮社)の書評を挙げておきます。