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三行書評 第103回

2003.6.9

思い起こせばちょうど1年前、FIFAワールドカップ™で日本が初めて勝利した日ですね。

 五つ星が満点。

大野晋
『日本語の年輪』
(新潮文庫ISBN4-10-103601-2)
お薦め度 ★★★
大野晋
『日本語の水脈日本語の年輪第二部
(新潮文庫ISBN4-10-103603-9)
お薦め度 ★★★
あらまし 言葉の変化についての本。と言っても「わしの若いころは……」なんていうチンケな話ではなくて、『古事記』『万葉集』『源氏物語』『徒然草』などでの用法や、『類聚名義抄るいじゅみょうぎしょう』や『日葡にっぽ辞書』といった辞書類での記述を参考に、単語(特に和語)の語源を考察している。
コメント 前者は1958年から2年間『朝日新聞』夕刊に、後者は1976年5月から1年間『アサヒグラフ』に連載したものだから、“日本語・タミル語同源説”発表以前の執筆である。どちらか一方だけということであれば前者を。後者の方が文章は上手いが、前者には「日本語の歴史」という概論(60頁強)が付いていて、これがなかなか面白い。
大野晋
『日本語の起源新版
(岩波新書ISBN4-00-430340-0)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 日本語とタミル語(インド亜大陸の南端にあるタルミナード州とスリランカ北部に居住するタミル人が使っている言語で、トラヴィダ語族に属する言語)を、多くの単語――モノを表す具象名詞のみならず精神世界を示す抽象名詞や、動詞・形容詞など――や文法構造や係り結びや詩の形式、さらに米・墓制まで検討し、同系言語であると結論づけた新書。
コメント タミル語に目をつけたきっかけは、著者の癖――新しい辞書を購入すると最初の20頁ほどを全部読む――だったらしい。『ドラヴィダ語語源辞典』(バロウ・エメノー共編オクスフォード刊)を購入して読んでみて「これは調べてみる価値がある!」と思ったらしい。集大成としては『日本語の形成』(岩波書店1万8000円!!)がある。

 大野さんじゃないやつがもう1冊あるんですけど、いちおう、“日本語シリーズ”は終了です。