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『スパイ・ゾルゲ』を観た

2003.12.29

 篠田正浩監督作品『スパイ・ゾルゲ』をDVDで観た。上映時間3時間2分、構想10年、制作費20億円を投じた篠田正浩監督の最後の作品だそうだ。

スパイ=ゾルゲ(ゾルゲ事件)とは《日本政府の機密などをソ連に通報した疑いで、1941年10月ドイツ人新聞記者でソ連赤軍諜報員リヒャルト=ゾルゲ(Richard Sorge1895〜1944)と尾崎秀実らが逮捕された事件。ゾルゲ・尾崎は死刑。》という出来事である(広辞苑より)。

 もっとも多くのカネと時間が割かれているのが、当時の上海や銀座や浅草や永田町や奈良などの街並みをCGで再現することであるらしいことが悲しい。

 ゾルゲ――第一次世界大戦の時にはドイツ軍兵士として戦って勲章までもらっている――や協力者たちが、なぜモスクワに情報を提供するスパイ活動をすることになったのかといったことは描かれない。彼らの思惑(理想や怒り)を描くことによって、当時の帝国主義の不合理性を浮かび上がらせることができたかもしれないのに……。あるいは売国奴の卑劣さを浮かび上がらせることができたかもしれないのに……。そんなことにはお構いなく、ただただ、エピソードが時系列で羅列されていくのだ。

 ドイツ人もロシア人も英語を話しているなんていうくだらないツッコミ以前の問題として、この映画にはテーマが見つからないのである。

 CGも含めて映像はきれいだし、役者も下手だとは思わない。だから、この低い評価はすべて監督(および脚本)に起因するものだと思う。

なんだかんだで今週は本を1冊も読了できませんでした。そういうわけで、今週の「三行書評」はお休みです。