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三行書評 第131回

2004.1.5

あけましておめでとうございます

 五つ星が満点。

山田風太郎
『戦中派不戦日記』
(講談社文庫ISBN4-06-183612-9)
お薦め度 ★★★
あらまし 東京医学専門学校(現東京医科大学)の一年生だった山田誠也青年が綴った1945年の日記。
コメント 抜粋も加筆もなされていないところに価値があると思う。たとえば、「B29日本昼間爆撃の機能損失」という記事に対して《日本の攻撃により、B29は今後昼間爆撃の基地を失い、夜間のみとなれる由書かる。これは面妖なり。B29は夜間と昼間との発進基地ちがうものなりや》(一月七日)と冷静だった山田青年も、東京大空襲に際しては、《日本人が一人死ぬのに、アメリカ人を一人地獄へひっぱっていては引き合わない。一人は三人を殺そう。二人は七人を殺そう。三人は十三人を殺そう。こうして全日本人が復讐の陰鬼となってこそ、この戦争に生き残り得るのだ》となるのが正直なところなのだろう。
阿刀田高
『コーランを知っていますか』
(新潮社ISBN4-10-334322-2)
お薦め度 ★★★
あらまし 旧約聖書・新約聖書・ギリシャ神話・シェイクスピア・ホメロス・ガリバー旅行記といった世界の名著を紹介するエッセイシリーズの一冊。『小説新潮』2002年9月号〜2003年6月号の連載。
コメント 岩波文庫版で井筒俊彦訳『コーラン』(全三冊)を読んだことがあるのだけれど、そのとき感じたのは「生活一般に関する規律――例えば妻四人までOKは寡婦救済の策だったとか――が多い」ということだ。間違ってはいなかったようだ。