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三行書評 第179回

2004.12.20

 五つ星が満点。

古川薫
『幕末長州藩の攘夷戦争』
(中公新書ISBN4-12-101285-2)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 幕末、長州藩と欧米軍艦との間で六度の交戦を見た「下関戦争」。その顛末を追うことで、《幕末の日本を脅かしつづけた外圧の正体を、攘夷戦という維新史の一断面に見ようとするのが本書の目的である。》(「はじめに」から)。
コメント 外国船を砲撃するほど過激な攘夷で凝り固まっていた長州が、1年もすると開国(倒幕)一色になっているのが不思議だった(先々週も書いたけど)。本書を読んで答え(の一つ)が見つかった気がする。
セバスチャン=モフェット
『日本式サッカー革命』
(玉木正之/集英社インターナショナルISBN4-7976-7101-7)
お薦め度 ★★★★★
あらまし メキシコ五輪からJリーグ開幕一〇年目までの日本サッカー界の歩みの記録。キーワード的に人名を列挙すれば、デットマール=クラマー・釜本邦茂・川淵三郎・リネカー・ジーコ・三浦知良・ハンス=オフト・佐藤仁司・城彰二・松澤隆司・スチュワート=バクスター・ピクシー・ドゥンガ・中田英寿・辻野臣保……etc.。
コメント 外国人だからこそ見えてくる本質があるのかもしれない。取材も綿密だし構成も見事。日本のサッカー界が手に取るようにわかる。たとえそれが一面だったとしても。
広瀬一郎
『「Jリーグ」のマネジメント』
(東洋経済新報社ISBN4-492-50128-2)
お薦め度 ★★★★
あらまし 日本でプロのサッカーリーグを設立するというプロジェクトの成功要因について、Jリーグ経営諮問委員を1998年から三期6年間務めた著者が、組織・財務・法務・人材・ブランド・メディア戦略といった面から分析する。
コメント 経済の専門用語――フィジビリティ=スタディ(事業化調査)とかステーク=ホルダー(利害関係者)など――が何の説明もなく使われるので面食らうけれども、それを乗り越えれば、サッカーのプロ化プロジェクトの凄さが理解できる。終章(「プロスポーツ・リーグ」の経済学)だけでもいいからプロ野球関係者に読んで欲しいものだ。5ページだけだからさ。