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三行書評 第197回

2005.4.25

 五つ星が満点。

佐藤誠朗さとう しげろう
『幕末維新の民衆世界』
(岩波新書ISBN4-00-430333-8)
お薦め度 ★★★
あらまし 商人・名主・豪農・医者・宮大工などが幕末に記した日記に拠って、庶民が見た幕末を再現する。
コメント 薩英戦争の勃発(文久三年七月二日)の報せが六日後には江戸に届くなど、情報の伝播が思いのほか速いことにびっくり。
神坂次郎
『今昔おかね物語』
(新潮社ISBN4-10-358404-1)
お薦め度 ★★★
あらまし 古今東西の日記や随筆や説話集などに出てくるカネにまつわる話を集めたもの。
コメント 亡者あり清貧あり心温まる話あり。
笠谷和比古
『江戸御留守居役』
(吉川弘文館ISBN4-642-05489-8)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 情報収集・幕令の解釈・上申文書の作成・先例の探索・藩主の礼儀作法指南といった役目を担った江戸時代の外交官=江戸留守居役。現代に残る史料を紐解いて実態に迫る。
コメント 事例が多い(ということは裏づけがしっかりしているということでもある)ので興味深く読めた。
山本博文
『江戸お留守居役の日記』
(読売新聞社ISBN4-643-91060-7)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 寛永から承応のころ(一六二四〜一六五四)に萩藩毛利家の江戸留守居役だった福間彦右衛門尉就辰がつけていた日記『公儀所日乗』。これを中心に、江戸時代初期の萩藩での出来事(と留守居役の対応)を見る。第40回(1992年度)日本エッセイストクラブ賞受賞作。
コメント 支藩(下松藩毛利家・長府藩毛利家)との不仲、藩士の殺人事件、由比正雪の乱、藩主の代替わり、将軍の代替わり(家光から家綱へ)……などなど。史料に基づいた論考に違いないのだけれど、大河小説の趣である。
山本博文
『長崎聞役日記』
(ちくま新書ISBN4-480-05787-0)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 平戸藩長崎聞役・野元弁左衛門の日記(平戸市役所蔵)をはじめとした九州各地に残る古文書を活用して、幕末における長崎聞役の職務と実態に迫る。
コメント 丸山町(歓楽街)での遊興はいただけないけれど、総じて言えばがんばっていたようです>長崎聞役。