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三行書評 第26回

2001.11.26

 五つ星が満点。

外村彰
『ゲージ場を見る電子波が拓くミクロの世界
(講談社ブルーバックスISBN4-06-257162-5)
お薦め度 ★★★
あらまし 著者の本職は日立製作所基礎研究所主管研究長で、電子線装置――電子顕微鏡とか干渉顕微鏡――の開発および応用研究が主分野。その仕事を通じて得られた研究成果の一端を記したもの。
コメント 平行な赤い線の前に置いた五円玉のシルエットみたいな表紙の写真を見ただけではピンと来ないが、「超伝導物質で覆ってあるので、ドーナツ状の磁石の磁界は閉じ込められる。磁場がない(が、ゲージ場=ベクトル=ポテンシャルはある)ところを飛んできた電子による干渉縞がずれる様子」と聞けばちょっとびっくり。難しいことはよく分らないけれど、この観測のための試料を作る段階の話はなかなかエキサイティング。
唯野司
『WindowsMe対応 パソコンをはやくする88の方法』
(発行エクシードプレス/発売ビー・エヌ・エヌISBN4-89369-897-4)
お薦め度 ★★★★
あらまし 不要な常駐アプリの解除から、マザーボードにジャンパピンを挟んでのCPUクロックアップまで88の方法が紹介されている。
コメント システムリソースの確保についてはまる三も書いたことがあるが、その他のTIPS=一工夫も含めて書かれてあり、なかなか良くできた「痒いところに手が届く本」だ。初心者を脱出したい人にお薦め。
西條敏美
『物理定数とは何か自然を支配する普遍数のふしぎ
(講談社ブルーバックスISBN4-06-257144-7)
お薦め度 ★★★★
あらまし G,g,J,c,e,NA,R,h,kなど12の物理定数について、誕生と精度探求の歴史をまとめたもの。
コメント やっぱりプランク定数が何なのか理解できない^_^;。ところで、上記アルファベットが何だったか思い出せなくて気持ち悪い方はこちらを見てください(別ウィンドウが開きます)。
飽本一裕
『クイズで学ぶ大学の物理』
(講談社ブルーバックスISBN4-06-257328-8)
お薦め度 ★★★
あらまし 力学と波動の話。公式を交えた演習多数。
コメント ツッコミどころがずいぶんあるが、科学読み物ならばこんなもんでしょう。以下、本書とは関係ないけど。高校と大学の物理の違いを乱暴に言えば、「解答が数字かどうか」だ。大学に入ったら解答そのものが「式」だった。次元を合わせる――時速を秒速に直してないから×――なんていう小手先あるいは細かいことは関係なくなった。式が表している状態が何なのかを追求していった。数学かと思ったぜ。
パリティ編集委員会
『間違いだらけの物理概念』
(丸善ISBN4-621-03904-0)
お薦め度 ★★★+★★
あらまし 電子の存在を示す実験として有名な羽根車の実験。電子がぶつかるから回るんじゃないんだそうだ。エネルギー保存則で羽根車が熱せられる。羽根車のそばの管内気体分子もさらに熱せられて弾き飛ばされる。その反作用で回るのだそうだ。そんなお話9篇――物理科学雑誌『パリティ』の連載――をまとめたもの。かなり難しい目からウロコ本。
コメント ところで、図書館で借りた本書には書き込みツッコミが多々あった。書き込みのなかで心底賛同できたのは1個だけ。賛同はできないけれどもっともだと思ったのが2個。他は「もうちょっとよく読めばいいのに」というものが大半。どうやら物理には詳しいらしいが日本語はそうでもないようだ。でも面白かったので、★★を足しておきました。
本の雑誌編集部
『日本読書株式会社』
(本の雑誌社ISBN4-86011-005-6)
お薦め度 ★★★★
あらまし Web本の雑誌でやっている「読書相談室」をまとめたもの。執筆者=相談員は池上冬樹・茶木則雄・日下三蔵・東えりか・大森望・吉田伸子・北上次郎の各氏。
コメント 茶木氏が薦める本は外れたことがない。北上(目黒考二)氏の推薦本はときどき合わないことがある。東氏は数少ないノンフィクション分野の書評家。
竹内書店新社編集部
『超ロングセラー大図鑑』
(竹内書店新社ISBN4-8035-0332-X)
お薦め度 ★★★
あらまし 売れ続けている45の商品――1890年の花王石鹸から1971年のカップヌードルまで――の図鑑。
コメント 本文を読まなくても、パッケージの変遷を見ているだけで楽しい。一番驚いたのは「オレオ」。これが1912年発売だとはとんと知らなかった。ゴクミのCM(1987年)まで知らなかったから。さて、あなたと同い年のロングセラーはありますか?