天文台建設日記
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2004年12月??日

星に興味を持った人ならだれでも、自分の天文台を持ちたいという夢を一度は持ったことでしょう。しかしながら、ほとんどの人は諸般の事情のため実現しません。幸運にも私は、ちょっとがんばれば自分の天文台がつくれるチャンスに恵まれました。「これはやるしかない!」と思い、天文台建設計画を立案することになりました。学生時代の後輩でもある昭和機械製作所の社長に協力を依頼しました。学生時代は「大学天文連盟」の仲間でしたが、連絡を取るのは大学卒業以来初めてかもしれません。連絡してみると、年月の経過はほとんど感じませんでした。昔の仲間というのはありがたいものです。
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2005年1月??日

天文台を作る場合、まず問題になるのが建設場所です。自宅が一番良いわけですが、私の自宅だと最微光星は平均5等。年に数回、天の川が見えるという程度です。こういう状態の自宅に、大口径望遠鏡を設置しても、ほとんどその価値を発揮しないということはわかっていました。これは実際に大口径望遠鏡を使って、明る空と暗い空の元で星を見比べてみないとわからないことです。

私は45cmF4
.1ドブソニアン望遠鏡を所有しています。これを使って自宅で微光星雲を見ようとしても全然見えません。バックグラウンドの空の明るさまで増幅してしまい、微光星雲がバックグラウンドに埋もれてしまいます。ところがこの望遠鏡を晴れれば天の川がまぶしいくらいに見えるところに持って行って星を見てみると、自宅では絶対に見ることのできない微光星雲がはっきり見えます。それもよく撮れた天体写真と同じように。球状星団などは写真よりきれいに見えます。この望遠鏡はこんなに性能が良かったのか!と思って驚きます。これはもっと小さな望遠鏡でも同じことが言えます。空の暗さによるこうした歴然とした違いを見てしまっては、自宅に天文台を作る気になどなれません。とはいえ、車で何時間もかかるところに作っても利用頻度が低くなります。
人によっては、「あなたの自宅でもその程度の空なら、冷却CCDとパソコンによる画像処理で何とでもなるでしょう」と言います。それは 天文台=天体写真撮影 と考える人で、私にはとても不思議ですが、そういうのが一般的な考え方になっているのでしょうか。本来は眼視で見えるはずなのに、光害のために見えなくなっている天体を写真に写すと、何かおもしろいことがあるのでしょうか。

私の場合、また幸運にも、大変条件のいい天文台建設場所の心当たりがありました。学生時代「大学天文連盟」の星仲間だった先輩が、私の自宅からも比較的近く、空の暗いところでペンションを経営しています。そのペンション敷地内に天文台と作らせてもらえないか打診してみることにしました。そのためにはある程度、具体的な話をしなければならないので、観測室や望遠鏡の設計を考えてみることにました。

* 写真は自宅屋上  望遠鏡はミードLX200−200GPS
 (ピラーはミヤウチ10cm双眼鏡用)

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2005年2月??日

自分の興味のあることなら、考えているとおもしろいようにいろいろなアイディアが浮かんできます。私の考えとしては、天文台は当然自分が使うことがメインですが、ペンションに泊まっていただいたお客さんには、できる限り見学していただいて、他ではめったに見られないきれいな天体を見てもらいたいと思いました。若い頃、プラネタリウムで生解説をしたいと思っていた私は、ペンションのお客さんに星の話ができるということは、それに近いものがあるのではないかと思います。天文台がペンションのウリになって、これを目当てに多少たりともお客さんが増えてくれれば、ペンションオーナーにも貢献できるかなと思いました。
従って、天文台は不特定多数の人が使うわけですから、「公共天文台」の範疇に入ります。公共天文台となる前提で設計しました。(コンセプト参照)

 * 写真は ペンションの近くにある駒止湿原

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2005年5月??日

ほとんど天文台の設計が完成して、ペンションに宿泊に行った際、天文台建設について打診してみました。
・ペンション敷地内に天文台をつくらせて欲しい
・建設費用はすべて自分が持つ
・できあがった天文台は、ペンションの施設として自由に
 使ってもらっていい
・建設場所は、敷地内で一番視界が良くお客さんが行きやすい
 位置に
というような提案でした。ペンションオーナーも学生時代からずっと天文ファンで、自分の庭に天文台ができるわけですから、喜んで受け入れてもらえると思っていました。


実際に話をしてみたら、ペンションオーナーからの答えは予想とは少し違いました。
「敷地内に天文台を作ることはかまわない。でも、あくまで個人用天文台として作って欲しい。ペンションの施設として使うことは考えない。」
ペンションオーナーも、自分で所有する望遠鏡を設置しておくための観測室を作ることを考えており、すでに基礎工事も終えていました。そちらは、いらないのではないかという話もしましたが、「お客さんに星を見せるのは、自分の観測室で十分、新たに作る天文台にお客さんを案内することは考えない」ということでした。そして天文台の建設場所として指定されたのは、最適と思った場所とは違うところでした。

この提案は一度だけではなく、何度か折に触れて話をしましたが、ペンションオーナーの返事は変わりませんでした。私としてはその方が設計も簡単で費用も安く済むので、ありがたいのですが・・・
かくして、私の意図とは違う形にはなりましたが、天文台建設計画が始動しました。

* 写真は 冬のペンション周辺 積雪は常時1m以上ある

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2005年9月??日

天文台を個人用天文台として設計し直しました。(「設計」参照)
設計はだいたい完成しました。
いよいよ、天文台を作り始めることになります。
・観測室の土台となる基礎工事は、専門の業者さんにやってもらう
・観測室は自分で木材を主にして作る
・ドームはドームメーカーに依頼する
・望遠鏡は、私の信頼する後輩で、プロ用望遠鏡を作っている
 昭和機械製作所に依頼する

まず、基礎工事をしてもらう建設業者さんを捜します。
ペンションオーナーのつてで、そういう工事をしてくれる鉄工所を紹介してもらいました。まずはそこと打ち合わせです。同時に昭和機械とも望遠鏡と赤道儀について打ち合わせをします。
ドームは昭和機械さんが推薦するニッシンドームにしました。

* 写真は 昭和機械製80cmリッチークレチアン望遠鏡
 (ななつがたけ北天文台に入るものではありません)

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