天文台建設日記
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天文台に必要な「物」がそろった後、テスト風景から定常的な観測開始後の日記です。


9月25日   赤道儀の調整

25E赤道儀は、調整がいまいちで、極軸のウオーム&ホイールのかみ合わせがきつくて抵抗が大きいため、未だにステッピングモーターを高速回転させたとき、たまに脱調する。反対に赤緯軸はゆるくて、クランプを締めた後、ガタガタしている。
これを直した。ウオーム&ホイールのかみ合わせ調整というのは、赤道儀の中で最も重要なもので、普通はユーザーが自分でやってはいけない。メーカーに調整を依頼するべきである。それは承知しているが、赤道儀の構造はわかっており、メーカーさんの手を煩わせることもないと考えられるとき、自分で調整することになる。昭和機械の社長も、私が自分で気が済むようにやるだろうと思って正確に調整していないのだろう。
25Eの極軸、赤緯軸のカバーをはずし、ウオームの位置決めネジをゆるめる。極軸はウオーム&ホイールが離れる方向へ、赤緯軸は近寄る方向へ調整ネジを回す。直感的に適当と思われるだけネジを回してみた。調整ネジはM6と思われるが、M6ならピッチ1mmなので、1回転すると1mm動く。それを極軸は45度ぐらい、赤緯軸は90度+αぐらい回した。両軸とも手で揺すってみて、ガタはなくモーターの回転もスムーズだった。夜になってから、自動導入を使って、鏡筒を南に北に、西に東に大きく動かしてみたが、快調に動くしバックラッシュもほとんどない。自動導入で、目的の天体が中心ではないにしても必ず視野内に入っている。ウオーム&ホイールのかみ合わせというのは、0.5ミリ以下の微妙な調整である。

赤道儀の調整はとりあえずこれで終わり。

今日、たまたま見やすい位置にあった、ぎょしゃ座からペルセウス座にかけての散開星団を次々と入れてみた。この付近には山ほど散開星団があるが、ほぼすべてを見た人は少ないだろう。つまんないもの、おもしろいものいろいろあったが、おすすめを後日「観測記録」のページに記載したいと思う。
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10月5日   VMC260入院中

VMC260の光軸が多少ずれているため、ビクセンに送り返して調整してもらうことになった。9月25日には宅配便屋さんに出した。
これはオーナー2が買って天文台に持ち込んだものだが、本人の希望でそうなった。さらにビクセンでの調整が終わった後、オーナー2のお友達のところへ送られた。こちらもかなりマニアックな人で光学系のテストに必要なものが一式そろっている。メーカーが製品のテストするときに使っているのとほぼ同等なものと思われる。その道のアマチュアの中ではとても有名な方です。テストしてみたら、あまり芳しくない。以前「天文ガイド」のテストレポートにVMC260があったが、そこにあったロンキー画像より明らかに劣っている。オーナー2の判断だが、交換を要求することになるかもしれない。
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10月8日   満月

台風の後の2日間、年に数回しかないと思われる最高の透明度になった。しかし、満月!  ここしばらく、晴れているのに月が明るいため、天文台には行っていない。仕事が忙しいせいでもあるが。
自宅で久しぶりに、まぶしいくらいに輝く満月を見た。最高の透明度の夜に見る満月も悪くない。「月ってこんなにきれいだったんだ!」と思った。そういえば星にはほとんど興味のない妻が言っていた。

月のない夜は重い荷物を持ってわざわざ山奥まで出かけていくくせに、きれいな月の出ている夜は外に出ようともしない。私なんか、「ななつがたけ北天文台」に行って、きれいな月が見られれば、それだけで十分満足できるのに。

マニアックな天文ファンではない、一般の人々はそうなんだ・・・と目から鱗。
「ななつがたけ北天文台」近くのペンション「楓林舎」のオーナーは、月齢など気にしていない一般のお客さんから、満月前後の日に「星を見に行きたい」という宿泊予約の電話が入ると、「月が明るいからやめた方がいいですよ」と断ってしまうそうです。妻は「何でそんなことするんだ! 普通の人は、澄んだ夜空の下できれいな月を見られれば、それだけで十分なのに。」と言っている。
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10月22日   楓林舎満室

21/22日、ペンション「楓林舎」が天文ファンで満室になった。満室になる特別な理由があったわけではないが、このところ、新月が週末に重なるため、その日に星目当ての客が集中する。満室中の満室で、ダイニングの人口密度が高い。
昼間は快晴だったが、夜の天気はよくなかった。しかし、みんな楽しく過ごせて、きれいに晴れなかったことを残念がる人はいない(・・・と思う)。
この付近は、自然に包まれてのんびり過ごし、忙しい社会の中でのストレスを解消するのに最適な場所である。ちょうど今、七が岳をはじめ周りの山々が紅葉に染まり、快適な気温とすがすがしい空気に包まれて、もっとも過ごしやすい時期になっている。ここの自然と「楓林舎」の食事と酒のおいしさ、オーナーの人柄、集まる仲間たちとの交流などすべてが楽しい。別に晴れなくたってかまわない、とみんな思っている(・・・のではないかな?)。
そういえば前回の新月の時、さんざん酒を飲んだ後に快晴になってしまい、酔っぱらい状態でもアグレッシブに観測していた某天文同好会の人たちも来ていた。前回の教訓があるため、また、日没時に快晴だったため、今回は酒の量は控えめだった。しかしながら、楽しく語らいながら、ほどほどに酒を飲みながら、ゆっくり夕食を楽しんでいた。後から思えば、その時間帯がもっともきれいに星が見えていたときだった。夕食タイムを終わりにして、さていくか!と外を見るとすでに曇っていた。「またやってしまった・・・」という感じ。オーナー1もオーナー2もその一員に加わっていたので、他人の話ではない。しかし、誰も後悔したり悔しがったりしてはいない。みんな星が見えなくても、満足しているのであった。

夜、天文台では、雲の切れ間ができると、パソコン画面上でそのあたりにあるめぼしい天体をクリックし自動導入する。わずかな晴れ間との追いかけっこ状態だったが、重装備の望遠鏡にしては軽快なフットワークで動き、あっという間に目的の天体がほぼ視野中央に入る。
ただ、ドームの回転が追いつかない。
今日の望遠鏡構成は右の写真の通り。 あいかわらず、サブ望遠鏡が鈴なり状態で、主鏡(黒)の上側(写真では右側)にTOA130(白)、下にOMC140(茶)とヘリオス1(白黒)。中央にはテレビュー85(緑)。となりにある灰色で両端に緑色が見える小さい筒はレーザーファインダー。
鏡筒はどれも定評ある製品で、切れ味のいい星像を結ぶ光学系である。ET星団(バルタン星人)を見たが、それぞれが特長を生かしたすばらしい星像だった。大きい光学系ほどいいというものではない。
昼間、Hα太陽望遠鏡の太陽像は、見ていて楽しい。見たことのない人はどこかで一度見てみるべきです。こんな小さいのに値段が非常に高い単機能望遠鏡に興味を持ったことなどない人でも、10分間のぞき続けたら買いたくなるかもしれない。見ている間に形が変わっていく天体というのは、プロミネンスしかない。

天文台のパソコンだが、望遠鏡を昼間、太陽に向けているときは、モニタ画面が暗くてよく見えない。夜はモニタがまぶしくて、画面を見た後はしばらく星が見えない。これを何とかしたかったのだが、モニタの明るさを昼間、画面が見える程度まで明るくし、夜は半透明黒のアクリル板を減光フィルターとして付けることにした。市販の液晶モニタ用フィルターは透過率が比較的高いため、減光用には使えない。とりあえず2mm厚のアクリル板を買ってきて、ちょうどいい大きさに切断しモニタ前面に付けてみた。これが減光率ぴったり! マウスカーソルがやっと見える明るさになり、画面全体としてはやや明るいが、画面を見た後、望遠鏡をのぞいてもあまり問題ない。ただ、目が慣れてくる(科学的な表現ではありませんでした。暗順応が完了する)とやはりまぶしいので、アクリル板は同じものを2枚用意し、必要があればもう1枚重ねることもできるようにした。
天文ソフトは自動導入用にはステラナビゲーターを使っているが、これまでは画面上で星雲・星団が目立ちすぎないように、位置や番号表示を暗めの色に設定してあった。普通の室内では、それが一番見やすかったが、減光フィルターを付けるとほとんど見えなくなってしまう。星雲・星団を黄色や水色などの明るい色に設定変更した。ソフトの画面設定は、明るい室内で作業するときと、ドーム内の暗いところで使用するときでは、全く違うことに今更ながら気づいた。
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10月23日   主鏡にファン取り付

35cm主鏡になぜか露がつく。他の鏡筒はまったく問題ないのに、35cmだけびしょびしょになっている。筒の一番奥にある鏡なので、露はつきにくいはずなのになぜか・・・。その対策のために当初は、主鏡セルの外側に露よけヒーターをつけて、加熱していた。しかし、どう考えても筒内気流をわざわざ発生させているようなものなので、それはやめてファンを付けた。主鏡には穴があいており、カセグレン系の焦点にもできるため、主鏡の後ろ側に接眼部が取り付け可能になっている。その穴にファンを付けた。空気が流れていれば結露しにくいという話なので。
観測中にファンを回すと、やはり筒内気流が起こりそうなので、様子を見て止めようと思う。

その日の夜、様子を見てみると相変わらず夜露がひどい。そして相変わらず、35cm主鏡が真っ先にくもる。くもるという表現は適切ではない。夜露が鏡面をしたたり落ちる。ドームと鏡筒のふたを開けておかないと気温になじまず筒内気流のもとになる。早くから開けておくと結露。ファンを回し続けていたが、何の役にも立たない。

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11月2日   コンプレッサーを買った

前記のように、ドームを開けると35cm主鏡に夜露がつく。夜中の2時ぐらいまでは何とか持ちこたえるが、それ以降曇り始め、翌朝に見ると鏡面から水滴が滴り落ちている。望遠鏡を使うたびに毎回これで、鏡面の汚れ方もひどい。望遠鏡が入って3ヶ月ぐらいなのに主鏡をはずして洗いたい。・・・と思ったときひらめいた。「コンプレッサーを買おう!」 よく工場などで使っているやつで、空気を圧縮して細いノズルから吹き出して、埃などを吹き飛ばすエアダスター。長いノズルをつけて、濡れた主鏡に圧縮空気を吹き付ければ、蒸留水で鏡面を洗っているのと同じだろう。MonotaROで調べたら安いので2万円程度だった。何とか買える値段だが大きくて重い。
また、よく考えるとそれだけのためにコンプレッサー&エアダスターを買うもちょっと大げさだ。しかし、これからも主鏡は濡れ続け、ゴミも付着する。頻繁に主鏡をはずして洗うよりもいいかなあと思い注文した。対物レンズやアイピースのゴミを吹き飛ばすもにも、ゴム球のブロアーなんか問題じゃない威力のはずだ。

品物はすでに自宅に届いているが、今は月が大きく、天文台には行かないので自宅の玄関先に置いてある。大きい! 重い! じゃま!
その効果のほどは後日レポートします。




     これ以降は、「天文台日記」へ
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