ポプラというと北大のポプラ並木を思い出します。竹箒の先がすっと立てられたような木の形を誰もが思い浮かべると思います。モネのポプラ並木の連作も箒状の背の高いポプラです。しかし、私が知ることになったポプラの木はそのイメージとは全く異なるものでした。私が日ごろ歩いている公園のほとりにある木が、ゆめゆめポプラの木であるとは思いもしま せんでした。根元近くから4本ほどの太い枝が出て、さらに枝分かれし大きな樹冠を広げているのですからとてもポプラを想像できませんでした。他の木の多くがドンと1本の幹を出しているのに比べたら何本もの幹があるように見えるのですから注目してもよさそうでした。しかし、その近くにある柳の木が大きく、風が吹けば気持ちよさそうに揺らぐので、ついつい大きな柳へ目が行っていたのかもしれません。
それが五月の末のある日のことでした。いつものように歩いていると遊歩道に白い綿毛のようなものが落ちているのが目に留まりました。目が慣れるにつれ、いくつもあちこちに落ちているのがわかりました。中には折れた小枝に絡みついているものもありました。その小枝を見た限りでは蜘蛛の巣か、あるいは昆虫がつくりだした糸が塊のようになったようにも見えました。折から池の方から風が吹き、そのたびに白い綿毛が飛んでくるのでその木を通り越して池の畔へと向かいました。しかし、池の先から綿毛がやってくるわけではありませんでした。振り返って通り越した木に目をやると、枝々に綿毛があるのを発見したのです。綿毛は小枝に絡みついているだけで、その木から生まれたようには一見わかりませんでした。しかし、綿毛が多く落ちているその木の下でした。この木にしかない、他の木には絡みついてはいない。綿毛はこの木のものに違いない。いったい何の木なのだろう。そんな思いを抱いて家に帰って調べたら、なんとその木はポプラでした。ポプラにはいろいろな種類があることもわかりました。驚いたことにポプラはヤナギ科でした。ポプラのイメージとしてある北大のポプラはセイヨウハコヤナギであることがわかりました。そして池の畔の木は品種改良したポプラで、カイリョウポプラ(改良ポプラ)とよばれるそうです。改良ポプラにはユーラメリカポプラやカロラインポプラなどがあるそうです。カイリョウポプラではかわいそうなので正確性に欠けますがカロラインポプラと呼んであげたいと思います。そういえば、中国の長春から来ていた留学生が初夏には街路樹から雪のように綿毛が降るヤナギのあることを話していました。あまりに多く綿毛が道路に舞うので、迷惑だとも言っていましたが、私には素敵な光景だと思ったことを思い出しました(写真左側の木がポプラ、右側の池のそばの木はヤナギ)。
5月の半ば、郊外のショッピングモールへ出かけました。広大な駐車場の一角に貯水池があり池の畔は葦と低木で占められていました。ずいぶんとヨシキリが池の畔のあちこちで囀っているので、池に近づいたところ綿毛が1つ2つと飛んできました。タンポポではありません。もしやと思い池の畔の低木に目をやると、たくさんの綿毛がちょうど風に吹かれて舞っているのが見えました。今まさにその盛りのように初夏の陽に当たり眩しく乱れ飛んでいたのです。こんな身近なところにもカロラインポプラは植えられていたのでした。訪れるヒトがいないのが残念です。
2019年のいつだったでしょうか。久しぶりに公園へ行って愕然としてしまいました。このポプラの木が伐採されてしまっていたのでした。根元だけが痛々しく残され、理解できませんでした。私は大切な人を失ったような気持になりました。こんな素敵な枝ぶりのポプラの木はこの辺りにはありません。この花がどんなにおもしろい花をつけるのかを、公園を訪れる人に伝えることもできなくなりました。何の邪魔になるのでしょうか。もう、写真のようなカロラインポプラはいません。
