木の涙

 閉じこもりがちな寒い日々、さすがに体が要求してきたのでしょうか、川べりのいつもの散歩道を歩いてきました。もちろん冬の寒さとしてはそれほど寒いという日ではありません。そうでなければ散歩をする気にはなれません。相変わらず土手の木々は殺風景で春の遠さを感じるばかりでした。まだまだ木の芽は堅いだろうと思って春には桜並木となる桜の枝目を見たときでした。木の目の先に雫がついているのを見つけました。雨が降って雫が木の芽の先まで垂れてきたのでしょうか。そのときはそう思いました。何本かの枝先の木の芽にはそのような雫が見られたからです。ただ不思議だったのは垂れ落ちるようではなく上を向いた木の芽の先にもあるからでした。まるで吹き出てきたようでもありました。それはその桜並木だけではなく、川べりの公園の枝垂桜の木の芽もそうでした。少し考えを進めて、木の水分が漏れ出てくるようなことがあるのかもしれない、これは木の芽の涙かな、と思ったりもして家へ戻りました。夕暮れまじかだったからです。

 植物についてよく学ばなかった私は、気になったことは図鑑などで調べることにしています。そこで発見したのは、木の芽の涙のような雫は、実は木の芽が冬の寒さをしのぐ防御機構でした。それはただの水ではなく、樹液が染み出てくるということでした。樹液は油分を含み、いわば不凍液の役割をするというのです。冬の寒さから木の芽(冬芽)を守る働きがあるということでした。トチノキなど北方系に起源がある木にはそのような仕組みが見られるそうです。温暖系の樹木にはそのように守る仕組みはなくアジサイがその例とされていました。しかし、本当に桜の木の芽の雫は樹液なのでしょうか。そして冬芽を守る働きがあるのでしょうか。その書物には桜の冬芽については書かれていませんでした。トチノキよりも目にする、気がかりな桜の冬芽です。

2018年02月25日