◆ニュータイプ読者参加企画
この企画はニュータイプ誌にガイア・ギアが連載中の1987年6月号において「最強連載ノベル緊急特集」と題されメカデザインが募集され、9月号に発表された読者参加企画です。1050通に及ぶ応募の中から選ばれた優秀作を佐野浩敏らがイラスト化し、富野由悠季氏自身がコメントされています。 左:正当MS系ガイア・ギア (イラスト:西井正典氏) モビルスーツからの発展を強く意識した本格派。トサカ状の部分はセンサー。ゴーグルはメーンカメラ。カブト状の頭の部分はレーダードームになっています。名前は「バルガス」。格闘戦用の武器としては、ヒザから突き出したスパイク、上腕部の穴から飛び出すムチ状のヒートロッドなどが迫力の設定。また肩の装甲に付いているユニットにケーブルをつなぐと、右腕のビームガンが発射可能という重装備も可能な態勢になっています。全体的にシンプルなデザインラインですね まあ、いいですね、という気分です。つまり「デコレーションでカバーしすぎていて、ちょっとね」という気分が、今のプロと同じで困ってしまいますが、既存の真似をなくすことが先決です(富野) 中:超巨大ガイア・ギア(イラスト:西井正典氏) 全長102m、全幅111mという超大型サイズで、移動司令部的な活動をするという設定です。肩には計40基のメガ粒子砲を備え、戦闘力は戦艦十数隻分に相当するとか。もともとのデザインでは、全身に迷彩色が施されていましたが、アニメートする場合影指定などの作業があまりに困難なため、今回はノーマル色でセルイラスト化しました。 巨大さを出し、モビルスーツの延長線のデザインとして、あり得るだろうと思わせる点を買いました。そして、実直な仕事ぶりは、現実的な処理能力があると思いました(富野) 右:高速走行型ガイア・ギア(イラスト:西井正典氏) かかとと足の裏に2つの車輪をもつスマートなデザイン。足のタイヤを使い、地上走行をすることができます。特徴はメーンカメラ。ガラス球状のカメラユニットが顔面のほとんどをうめており、あらゆる角度に回転するというユニークなアイデアが使われています。また、手の指先には、いろいろな武器にフィットするラバーのローラーがつけられるなど、細かい工夫がされています。胸の横のエンジンブロックもむき出し。バイクのマフラーのような排気口の処理がなされています。全体的にバイク感覚、ライト感覚のメカに仕上がっています。 見ただけで納得させる力があります。もちろんガイア・ギアであるのかという点に関しては、改善しなければならない点がありますが、「立体」も想像させる力を買いました。 右:変形ガイア・ギア(イラスト:西井正典氏) モビルス-ツ的な形態と、下のデザイン画の2つのフォルムをもっています。なかなかにダイナミックな変形で驚くばかり。こんなふうに変形してどんなメリットがあるのか!?なんて難しいことは考えずに素直に楽しめるデザインに仕上がっているところがいいですね。レトロ感覚で。 単純な変形だから好きです。ほんとうに変形できるのならば使いたいと思うくらいです。しかし、そうはいっても、格好良くないと商品にはならない、スポンサーはつかないという点は、プロになる場合は絶対条件として、重要なことです。(富野) 中:ガイア・ギアファルドゥム(イラスト:佐野浩敏) 主役ロボットをはれそうな1品。ファルドムと名付けられたこのロボットは頭部にNASAダクト(NASAが開発したエアインテーク)などがついていてオッシャレーな出来。アクションポーズもつけやすいデザインですね。 気楽にやってくれちゃって、という点が好きです。ここに独自性を開発したら、これはもう絶対にプロの世界!現在のプロはもっとがんばらないといけないとわかります。まじめになってください(富野) 追記:このガイア・ギアファルドゥムをデザインされた方はその後プロとしてアニメの世界に入られており、原型師としても活躍されている。「ガイア・ギア」がきっかけでプロの世界に飛び込んだ稀有な例といえよう。 左:GG・ブランシェ(イラスト:HAJIME HORI) 後頭部に弁髪のようなスタビライザーテールを持つガイア・ギア、ブランシェです。アーマーが各ブロックごとの一体成形アーマーであるため、全体的に洗練されたラインでまとめられています。バズーカの形もルイジ・コラーニふうの美しさ。一方頭部は、頭頂部と側頭部にモノアイをもち、生物的な迫力を持っています。このアンバランスさが魅力なのかも! この作品は「欲」は見えるのですが、キャラクター性にもう一歩という感じです。それが身につくと、とてもよいデザイナーになります。基礎の勉強と、もっと広い趣味をもってください(富野)"応募作には未来がある 文/富野由悠季
このページを閉じようとした方、ちょっと待って!このページのイラストや、2席に入選した名前に目がいって、
「俺のが、あたしのが当選していない!」と知って、ページを閉じようとした方!そのような方こそ、このページを読んでください!今回は、自信のある方の原稿は、たいていは外してあります!
なんで!?
それは、今回の「ガイア・ギア」の白黒ページの最後と、次回で説明したいと思います。そこには、あなたの原稿が掲載されるかもしれません。
そして、そのような方にこそ、このページを読んでもらいたいのです。今後のデザインの勉強のためにも、ぜひ!
まず、お詫びをしなければなりません。投稿原稿が到着するにしたがって、編集部と小生は大失敗をしたことに気がつきました。
原稿のレベルが高低あまりに広くなってしまって、原稿募集の時に、原稿にもっと条件をつけるべきだったと気づいたのです。
原稿サイズや使用する紙、筆記用具などに基準を設ければ、自動的に原稿のレベルが決まってきたからです。その点をお詫びし、かつ、レベルが高かったために、ノートの紙に描かれていたレベルの原稿は、最終審査から外れる結果となりました。そのため、小学生たちのユニークな原稿が受賞しなかったことを、心からお詫び申し上げます。
正直なところ、」これほどレベルがあがっているとは思わず、この点は「読者を馬鹿にするな」というお叱りを、受け入れるだけです。
●審査基準
今回は、デザイン募集であって、「絵」の募集ではなく、また、作品コンセプトの募集でもないという点を基準としました。また、全体のレベルアップが顕著であったために、応募原稿に描かれたメカ・キャラクターをだいたい同じ大きさに縮小・拡大したコピー原稿によって審査をしました。そうしませんと、絵の上手下手とか、原稿のきれいさ汚さを基準にしてしまう結果になるからです。
●気をつけてほしかったこと
レベルがあがったと書きましたが、しかし、それは技術面の問題だけであって、本当のオリジナルデザインがあったのか、という点につきましては、残念ながら、と首を傾けざるを得ませんでした。今はコピーマシンを含めた文房具が発達したために技術面の向上は当然といった面があります。そして、デザイン募集であったにもかかわらず、若い方の「ガンバリズム」が全く別の方向に出てしまって、趣旨と違う原稿が多数ありました。そして一番残念だったのが、既存のデザイナーのアイデアをコピーした原稿が多かったということです。そのために1等賞を認めるレベルではなかったという結果となりました。
●で、結果
所詮は独断と偏見で決めるしかなかったのですが、以上の点からなるべくオリジナルっぽいものを基準に決めました。順位をつけずに第2席としたのは、良いところがありながら、すべてを認めるわけにはいかないために、同列としたのです。まとめとしてガイア・ギアの世界は、モビルスーツの延長線のものでしかないのです。今回の6点と次回カラーで載せる4点(次号は何の特集もなく、結局載ることは無かった)を見てもおわかりの通り、選ばれた作品でも、誰の真似かわかる例が多すぎるのです。これでは、オジサンたちは当分失業しないですむ、とプロを安心させるだけです。しかし、こう言いたくなるのも、応募作品がプロのものと大差なく、本気で文句を言いたくなっただけのことです。応募された方々には未来があります。がんばってください。